この新本庁舎建設について、「白紙」のうえ見直すべきと考えます。
〈 主な理由 〉
①
新本庁舎の建設費は当初52億円と提示されましたが、建設費の高騰により1.3倍〜1.5倍になることが分かりました。その旨、令和5年(今年)3月の市議会で市から説明がありました。
つまり、最大78億円ほどになる可能性があります。
① 国の援助は既に終わっている
国の財政的援助として期待されたのが「市町村役場機能緊急保全事業」です。しかし、この事業は令和2年度で終わっていて延長はありません。延長しないことは閣議決定されています。
② そもそも対象外
加えて、この事業の対象は「耐震化が未実施」の場合であり、現本庁舎は耐震化済み(平成27年度、工事費1.2億円)であることから、そもそも事業の対象になりません。
つまり仮にこの事業が復活したとしても、多治見市の本庁舎は対象外となります。
③ 欺くような説明
市は市民や市議会に対して、「全国市長会を通じてこの事業の復活を国に要望している」と説明しています。しかし、既に国(総務省)から全国市長会に対して、復活はない旨の回答がされています。
つまり、復活がないことは確定しているにもかかわらず、いまだに「要望している」と説明して国の援助をほのめかしてきました。この点は、市民や市議会を欺いてきたと言っても過言ではありません。「国の財政的援助は見込めない」と正直に説明するべきです。
① 市役所に行かなくても所用が済む
市役所のデジタル化の進展によって、例えば「スマホを利用した持ち運べる役所化」(岐阜県が推進中)などにより、近い将来には市役所に行かなくても所用を済ませられるようになります。
② 市二庁舎体制でも行き来は不要
また、現状の二庁舎体制でもワンストップ窓口を創設すれば、庁舎間の行き来を不要にできます。
① 耐震性能上の問題はない
現本庁舎は平成27年度に耐震補強工事を実施してIs値0.31から0.63となり、国が求める耐震性能(Is値0.6)以上になっています。現本庁舎は耐震性能上の問題はありません。
② 国も認めている
その裏付けとして、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況 調査報告書」(消防庁)で、本庁舎、駅北庁舎とも「耐震化している」と評価されています。
③ 「Is値0.9以上必要」は大きな間違い
一方で、市は「災害応急対応施設はIs値0.9以上が必要」との説明を繰り返しています。しかし、これは大きな間違いです。
このIs値0.9以上は「国家機関」の拠点施設に適用されるものであり、「地方自治体」の施設には適用されません。(「官庁施設の総合耐震・対津波計画基準」国土交通省を参照)
よって、制度的にIs値0.9以上の必要はありません。建築基準法上のIs値0.6以上(現本庁舎はIs値0.63)で制度的に問題はありません。これは総務省にも確認済みの事実です。
間違いを指摘しても、何故か市は「Is値0.9以上必要」と言い続けています。誤解をしていたとしても、偽っていたとしても、どちらにしても大きな問題です。
④ 宇土市の事例を使った印象操作
市はYouTube動画で本庁舎について「熊本県の大震災、宇土市(庁舎)がこんなに崩壊を致しました。こういう状況にならないために、新しく本庁舎を建替えなければなりません」と説明をしています。
しかし、宇土市庁舎はIs値(平成15年診断済)が0.3を下回っていました。多治見市の現本庁舎はIs値0.63であり、宇土市のように崩壊するとは考えられません。
これは極めて不誠実であり、印象操作と言っても過言ではありません。
⑤ 他市の事例を使った不誠実な説明
また、令和3年度、4年度の地区懇談会では、庁舎建替えの事例として以下の庁舎が紹介されています。
(岐阜県庁、大垣市役所、羽島市役所、各務原市役所、土岐市役所など)
懇談会では明示されませんでしたが、上記の庁舎はいずれもIs値0.6未満で国の基準を満たしていませんでした(例:土岐市役所Is値0.25)。
そして前記の消防庁「調査報告書」では、いずれも「耐震化していない」の評価でした。よって上記のいずれの庁舎も、必要に迫られて建替えが行われました。
Is値の説明なしにこれら他市の事例を紹介することは「県や他市が庁舎を建替えているので、多治見市の建替えも問題ない」という印象操作とも捉えられ、不誠実な説明であったと言えます。
① 長寿命化を図るべき
「多治見市公共施設長寿命化計画」(令和2年)では、市が保有する公共施設は鉄筋コンクリート造の場合、目標使用年数は「80年」になっています。したがって、小中学校や公民館などのほとんどが80年使う計画になっています。例えば、最近では文化会館が築40年で改修工事を行い、あと40年使って最終的に80年使う計画になっています。
しかし、現本庁舎は現在築49年にもかかわらず、新本庁舎の建設計画が進められています。早ければ4年後の完成と説明されています。
現本庁舎は、7年前(平成27年度)に1.2億円をかけて耐震補強工事を実施したばかりです。その他の必要な改修工事を施して長寿命化を図るべきです。
① そもそも駅北庁舎を使うことになっている
現本庁舎は耐震性能上の問題はないにもかかわらず、市は「防災拠点として不十分」と説明しています。しかし、仮に現本庁舎が防災拠点として使えなくなった場合には、そもそも駅北庁舎を使うことになっています。
平成27年発行の多治見市役所駅北庁舎のパンフレットには「大規模地震等で本庁舎が機能しない場合には災害対策本部を設置し、災害対応にあたります。」との記載があり、駅北庁舎4階に災害対策本部室が示してあります。
よって、仮に現本庁舎が防災拠点として不十分であったとしても、災害対応に問題はありません。
この駅北庁舎の活用については、何故か市からは積極的な説明はありませんでした。
① 現段階での市民合意は?
令和4年6月市議会の議決では付帯決議の一つとして「市民合意」が挙げられています。
現段階で、新本庁舎の建設に対して市民合意が得られているのか疑問が残ります。
① 市民の幸せに直結する政策を優先
最大78億円ほどの建設財源は、渋滞対策、子育て支援、産業力の強化など、市民の幸せに直結する政策に活用すべきです。
新本庁舎建設は職員の労働環境の向上になっても、市民の幸せには直結しません。
① 「白紙」のうえ見直すべき
上記のような状況や考えから、一旦立ち止まり「白紙」のうえ見直すべきと考えます。